【発芽率80%超】パキプスの実生方法|ハイター漬けやヤスリがけは間違っていた?!【オペルクリカリア・パキプス】
今回は実生界のラスボスとも言える「オペルクリカリア・パキプス」の実生について、高発芽率が実現可能な実生方法についてご紹介いたします。
オペルクリカリア・パキプス
オペルクリカリア・パキプス(以下パキプス)は塊根植物の王様とも言われる植物で、小さく可愛らしい葉やボコボコとした幹肌、稲妻のような枝振りなどから非常に人気の種になります。
しかし、大型株を購入しようとすると数万〜数十万円と簡単に手が出せるものではありません。そのため、パキプスが欲しい人が行き着くのが「実生株」だと思います。
しかしパキプスは実生界隈で最高難易度とも言われるほど非常に実生難易度が高いことが有名です。さらには種子自体も1粒200〜500円と非常に高価なため、なかなか手が出せない人が多いのが現状です。
従来のパキプスの実生方法
パキプスの実生で問題となるのが「硬実種子」の処理方法です。
これまでには、ハイターに浸けて外皮を溶かす、ヤスリで削る、燻製で燻すなど様々な方法が試されてきました。
しかし、どの方法も安定した発芽率を維持することが難しく、良くても発芽率10%〜20%にとどまり、大半が発芽率が0%という状況が続いていました。
あまりにも発芽しなかったため、種子の鮮度が非常に重要で、採取から1〜2ヶ月以内の非常に新鮮な種子でなければ発芽しないという噂も広まっていました。
管理人も輸入から時間が経過していない非常に新鮮な種子200粒を用いて、発芽率が期待されていたハイター漬けとヤスリでの2つの方法で実験しましたが、残念ながらどちら全滅に終わりました。
種子は200粒もあったため、数打ちゃ当たると思いながら数粒でも発芽してくれたらと思っていましたが、正しい播種方法を用いない限り発芽しないことが明らかになりました。
おそらく、ハイター漬けやヤスリでの方法で発芽したとされる個体は、その個体自体が非常に活発であったり、種子の状態がよかったりなどさまざまな要因が重なった結果、幸運にも発芽したものであると考えられます。
200粒の種子を播種して、一粒も発芽しなかったことからハイター漬けやヤスリでの方法で高発芽率を実現することは無理であると判断しました。
新しいパキプスの実生方法
管理人が80%の発芽率を達成した実生方法は「種子のフタ」を外す(取り除く)ことです。この作業を行うだけで、他に特別な処理は必要ありません。たったこれだけでパキプスは発芽してくれました。
自然界において普通に繁殖する上で種子のフタを外す作業が行われることはないため、別の効果的な方法があるかもしれませんし、将来的に新しい方法が発見される可能性もあります。
しかし、今回ご紹介した方法を適切に実施し、丁寧に管理すれば、安定して80%以上の発芽率を実現することができるはずです。
種子の購入先は同じであるにも関わらず、播種方法を変更して、種子のフタを外しただけで発芽率80%を実現することができました。
種子のフタとは
種子から芽が出る際、パキプスの芽はどこから出ると思いますか?半分に割れるのでしょうか?どこかに穴や亀裂があるのでしょうか?硬く分厚い種皮を破って出るのでしょうか?
パキプスの種子には非常に分厚く硬い種皮が存在しており、まだ若く力のない芽や根には硬い種子を割るほどの力はありません
実は、パキプスの種子には芽や根が出るための穴が存在しており、それはフタ(栓)で覆われています。フタは水が染み込むほど隙間がなく、しっかりと密閉されているため簡単には外すことができません。このフタが水の吸収を妨げたり、根が成長するのを妨げているのです。
フタの位置
種子の頂上部にヘタがある時、フタは左下に存在していることがほとんどです。(たまに右下にある種子もあります。)
フタの探し方ですが、種皮とフタの境目がはっきりせず非常に探しづらいことが多く、歪な種子だとそのままの状態ではわからないこともあります。
見つけられない場合には表面のボコボコとした部分がツルツルになるまでヤスリで削ることでフタを発見しやすくなります。
フタの外し方
フタの外し方は個人差がありますが、「ナイフ」や「カッター」などの薄く尖った刃があるものや「キリ(千枚通し)」といった先が尖ったものを種皮とフタの境目に差し込み、テコの原理で開ける方法があります。
深く差し込みすぎたり、あまり強く深く抉ると中の胚が傷つき、発芽しなくなる可能性があるので注意しましょう。
高発芽率を実現するポイント(比較)
従来の方法
従来は上記のようなポイントが発芽率を高める方法と噂されていました。
- 種子の鮮度が良い
- ハイターにつける(最大30分)
- ヤスリで削る
- 種子を燻製する
- 管理温度を40度まで上げる
- 覆土しない
- ベンレートを使用する
- ジベレリン(発芽促進剤)を使用する
ですが、前述した通りハイター漬けやヤスリがけ、燻製で燻すなどは様々な人が実践してきましたが、有効性が一向に確認できませんでした。
新しい方法
今回ご紹介するパキプスの新しい実生方法に関して高発芽率を実現するためのポイントは下記の3つになります。
- 種子の鮮度が良い
- 種子のフタを外す(胚を傷つけないように)
- カビ対策を万全にする
種子の鮮度は実生をする上でもちろんのこと、今回ご紹介する「種子のフタを外す」こと、そしてパキポディウム・グラキリスほどではありませんが、パキプスもカビやすい傾向にあるように感じたため、カビ対策を万全にしましょう。
ベンレートやジベレリンについては未だ情報不足のため、発芽率への影響については不明です。
上記の3つがパキプスの実生を成功させるためのポイントになります。
種子の購入
発芽率を高めるためには何よりも「種子の鮮度」が重要です。必ず信頼できる販売者から購入するようにしましょう。
代表的なオンラインショップには「seed stock」や「多肉植物ワールド」「プラントブラザーズ」があります。
おすすめのショップへのリンクは下記に掲載しておりますので、ぜひご覧ください。
どのショップも新鮮な種子を販売しており、非常に信頼のあるサイトになりますので、初心者はこれらのショップから購入するのがオススメです。
実生手順
事前準備
パキプスを播種する用土を各自で配合、もしくはすでに企業が配合している用土をプレステラに7割くらいまで入れ、その上にバーミキュライトを敷き詰めます。
用土の殺菌と微塵除去のために、鉢底から出る水が透き通るまで、上から満遍なく熱湯をかけていきます。(用土から湯気が出るまでしっかりと行います。)
果肉の除去
種子に果肉がついていない場合はこの工程を省いても大丈夫です。
種子の購入先によっては種子に「果肉」が付いている場合があります。果肉がついたままで播種してしまうとカビの原因になりますので、必ず除去しなくてはなりません。
果肉は種子を水に漬け込んで果肉をふやかし、キッチンペーパーなどでこするだけで簡単に取ることができます。
しかしこれだけでは、種子の表面にうっすらと果肉が残っているので、ブラシや排水溝ネット等を用いて擦り、綺麗に果肉を取り除きます。
フタを外す
先ほどポイントを解説した通り、フタは種子は大半左下にあります。見つからない場合にはヤスリ等で軽く削りましょう。
フタを見つけたら、カッター、キリ(千枚通し)などの薄く尖った刃や先が尖ったものを種皮とフタの境目に差し込みフタを外します。
深く差し込みすぎたり、あまり強く深く抉ると中の胚が傷つき、発芽しなくなる可能性があるので注意しましょう。
浸水させる
殺菌と発芽促進のために、メネデールと殺菌剤(ベンレート、オーソサイドなど)を用いて水で希釈し、メネデールと殺菌剤の混合液を作ります。
希釈倍率についてはメネデールは100倍希釈、ベンレートは1000倍希釈、オーソサイドは800倍希釈、その他の殺菌剤についてはそれぞれの殺菌剤に応じた希釈倍率に従って希釈してください。
作った希釈水の中に種子をいれ、30分程度浸水させます。
種をまく
希釈液に入っている種子を取り出し、種をまいていきます。(希釈液はこの後も使用するため捨てないでください。)
用土が冷めていることを確認したら、用土の上に「フタを外した部分が上を向くように」置いていきます。
覆土(土を被せる)はせずに、土の上に置くだけで大丈夫です。
発芽
播種後は早いものだと数日で発芽し、徐々に根、子葉が出てきます。この段階で鉢や土を動かしてしまうと根が折れて成長が止まったり死んでしまう可能性があるので、なるべく動かさないようにしましょう。
画像の左側、根っこの周りにふさふさとしたものが生えることがありますが、これはカビではなく「根毛」になります。
根毛には植物が根の表面積を増やして、水や栄養素を効率的に吸収しようとする働きがあるため、カビと間違って除去しようとしないようにしましょう。
発芽からさらに数日経過すると、パキプスらしい葉っぱ(本葉)が出てきます。
管理方法
湿度管理
受け皿に先ほど調合したメネデールとベンレートの希釈液をいれ、腰水管理を行います。
鉢に蓋はせずに、朝昼晩の1日3回程度軽く保湿される程度(乾燥させないため)に霧吹きを行います。その際、種子のフタを外した部分に水が溜まらないように注意してください。
温度管理
また、パキプスが発芽するために必要な温度は25度〜30度とされていることから、ヒーターマットを使用して鉢内の温度が30度前後を維持できるように管理します。
↑温度調節機能なし↑
↑温度調節機能あり↑
明るさの管理
明るさについてですが、以前は常時LEDライトを当てておいた方が良いという噂もありましたが、そこまで気にする必要はありません。
発芽自体には明るい窓際や一般的な蛍光灯の明るさがあれば十分でした。(24時間明るくしておく必要はありません。)
発芽後の管理において室内で育てたい方は、植物育成LEDライトはあった方が良いでしょう。光合成をたくさん行わせることで幹や葉、塊根の成長に繋がります。
通気性の管理
通気性については鉢に蓋をしていないことから、風を当ててしまうと種子が乾燥してしまうので風は当てずに管理しますが、発芽後はサーキュレーター等を用いても大丈夫です。
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